小学校の先生が、子供たちの映画づくりの指導をしなければならなくなった時に役立つ記事

「子供たちが映画を作りたいと言っています。どうしたらいいでしょうか。」

ある小学校の先生から問い合わせをいただきました。

実は、学校の先生方からのこうしたメールは、あまり珍しくありません。

カルフのワークショップにも、
学校の先生が申し込まれることも多い。

そこで、いつも僕が回答している内容を公開したいと思います。

子供たちが初めて映画を作ろうとして、
知識のない先生が指導しなければならなくなった時、
役立つであろうこと、です。

子供たちが映画を作るとき必要な基礎知識

プロの情報に惑わされず、今あるもの・資源を活用しながら、工夫で楽しく乗り切ろう!

▼最低限必要な機材:カメラ+三脚+編集ソフト(アプリ)

カメラは家庭用ビデオカメラで十分

学校によってはiPadもある。これもいい。
※スマートフォンは個人向けなので学校での使用は怪しい。

iPadの場合、縦で撮るか、横にして撮るか、統一すること。(映画は横がいい)

 

三脚は必須

1,500円から3,000円程度のものでいいのだけど、購入できない場合は、どこからか借りてきてもいい。

iPadの場合は、三脚とiPadをつなぐ器具が必要。これだけは購入は仕方ないかな。

どうしようもない場合は、壁や机にくっつけてとにかくカメラを安定させることを心がける。ぶれる映像が一番ダメ。


※まあ、作品の中に、1、2カ所、ぶれる映像が含まれる、というレベルなら許される。

撮影のいちばんの問題は、「声」

誰もが、間違いなく、「声が聞き取れない」という問題点と戦うことになる。100%絶対、確実に。
マイクがあればいいのだけど、小学校ではやはり購入が難しいことが多い。

マイクが無くてもなんとかするためのテクニックは、
「セリフを話す時は常にアップ」というもの。

アップの映像は、自然とカメラも近づいているので、声がきちんと撮れている可能性が高い。
遠くで2人が話している、みたいな映像では、セリフは聞き取れないもの、として考える。
また、カメラの向こう側に騒音の元がないように気をつける。

照明は・・・

まあ、用意できないと思うので、とにかく明るい場所で撮りましょう、ということだけ。
意図的にシルエット(逆光)にする、ということもありますけどね。

どこにシルエットができているか、意識しながら撮る。表情をしっかり見せたいときは、右のように演技を変えてもらったり。

編集ソフト・アプリ

iPadがあれば、iMovieがベスト。
そのほかのアプリなら、InshotVLLOあたりは、アプリロゴが入らなくて無料範囲で十分使える。

Macintoshなら、iMovie
Windowsパソコンで無料のソフトは、古いところではムービーメーカー。
新しいパソコンならshotcut
ちょっと難しいかもしれないけれどDavinci Resolveも。

映画を作るには、字幕とか特殊な加工とかあまり入れなくていいので、最低限の機能で十分。
つまり、<どんな編集ソフトでも作れる>。

▼スタッフの種類:役割分担

先生がプロデューサー。監督とスタッフは生徒。
これが基本です。先生は作品の内容だけでなく、全体の制作進行を見てあげてください。

監督は1人がいいけれど、リーダーシップを発揮できなかったり、ワンマンになるようなら、2人監督もいい。
監督とカメラは分けた方がいい。監督は演技に、カメラは撮り方に集中する。

・プロデューサー(先生):
子供達に危険がないかどうかチェックする。あと、仲介。
意見が分かれたり、揉めたりした時に、先に進むよう促す。ポイントは、企画意図(後述)に対してどうか?
先生はカメラの液晶ではなく全体を見て、それぞれの役割が機能しているかチェックする係。

・監督:
どんな演技をしてもらうか、どんな撮影をしてもらうか指示を出す。
※撮影するその時がいいか?ではなく、ゴールに必要か、合っているか、で判断する。

・助監督:
スケジュール管理・撮り漏れがないようにチェック

・撮影:
余計なものが写ってないかチェックする

・役者:
素人はたいてい早口になる。普段の話し言葉では無く、句読点ではっきり区切る。声を張る。少しゆっくり目に話す。

映画撮影は、チェックするものが山のようにある。1人であれもこれもやれない。
例えば、カメラマンは、写っているものをチェックするだけで必死。
別の人に「セリフが聞き取りやすく話されているか」のチェックも頼むとベター。
とにかく、役割を分担する。この辺りは、プロの情報と大きく異なる。

・全体の進行管理の担当も重要。
撮影部隊は、目の前のことに一生懸命になり、大きな部分を忘れる。
だから、残り時間を見ながら、進行をつつける人も必要。

▼進め方

・工程
シナリオ→簡単な絵コンテ→準備→撮影→編集→完成

映画作りは、後ろからの逆算で考える。
編集で必要なものを撮影で撮る。

撮ったものをうまくまとめるのが編集、と考えてしまうが、大間違い。
最初にどんな撮影素材が必要なのか、計画しておかないといけない。

・撮影は1日でやり切る。
2日に分けると、服装を間違えたりとミスが起こりやすい。

授業の中でやることになるので、45分が2コマとかになるか。
90分でどこまで撮れるか。
やり直しも含め、1つのカット(よーいスタートからカットまで)に15分かかるとすると、ぶっ通しでも90分で6カット。
つまり、シナリオを6カット程度に分割して準備することを考える。

・スケジュールのイメージ

シナリオ・撮影準備:2、3週間
撮影:1、2日
編集:2週間

※プロのやり方を調べてもあまり参考にならない。
プロの役割分担は、それぞれが専門知識と機材とスキルを持って集まっているので、とうてい真似できるものではない。

具体的な映画の作り方

①企画をまとめる

企画書は全員で共有する。意見が割れたらこの企画に準じて判断する。
・企画書には次のことを書く。箇条書きでいい。

-⾔いたいこと/伝えたいこと
-誰に⾒てほしいか
-⾒終わった後、どんな感情を得てほしいか
-どうやって公開するか/したいか
-何分が妥当か(応募するなら応募要項に準ずる)

 

②シナリオを書く

フォーマットなんでどうでもいい。
横書きでびっしり書けばいい。
それも面倒なら、台詞だけ箇条書きでもいい。
シナリオをどこかに提出するわけではない。

ただ、セリフに注意。
素人は、アドリブなんかできるものではない。セリフはきちんと決めておく。
一つ一つのセリフは短く、聞いて分かる言葉で。
説明ゼリフをなくす。

例)
「昨日ね、お母さんと弟と出かけて・・・」は理解されない。
↓↓
「昨日ねー」「どうしたの」「3人で出かけた」「誰と?」「お母さんと弟」

見て分かることはセリフにしない。

例)
「もー、暑いー!」は、暑そうな顔でハンカチで汗を拭けばいい。

面白いストーリーのコツ:
普遍的な出来事に変な要素を混ぜると面白くなる。

例)
女の子がお父さんと仲良くできない×宇宙人
友情のもつれ×タイムスリップ
大好きなおばあちゃんに会う×お化け

推敲の方法:書いたシナリオは、必ず推敲する。
読み合わせをして、言い回しなど詰める
読み合わせをしながら、動きも入れて確認。
※いろんなミスが見つかるし、必要な小道具も見つかる。

ストップウォッチで計りながらの読み合わせも。
完成作品の長さがイメージできる。
長すぎたらシナリオの段階で調整する。

③撮影準備に入る

・(すでに書いたように例えば)シナリオを6分割し、それぞれどう撮るかを考えるのが絵コンテ。
どの場所で撮るかを考えるのがロケハン。

絵コンテは難しく考えない。
「字コンテ」と呼ばれる文字によるメモ書きでもいい。
要は、どう撮るかを共有できればいい。

基本は、最初は引きのカットで始まる。(こんな場所でこんな登場人物がいるよ、という説明的なカット)
セリフがある場所は、アップにする。(声をよく撮るため)

引きばっかだとつまらないし、
寄りばっかだと何が起こってるのか分からない。
うまく混ざるよう考えていく。
(しかし、これはこれで悩ましい。答えがないので)

映画は「そう見えれば」いい。
実際に撮影場所がどんなところなのか、は気にしない。時間帯も気にしない。
放課後に、早朝のシーンを撮ってもいい。ただ、空を撮るとバレるから、廊下で撮る、とか工夫を。

撮影テストを必ず行う。
撮影メンバーでテスト撮影で、1、2カット撮ってみる。
それを教室のテレビなどに写してみて、声を聞いてみる。反省点を話し合う。改善策を話し合う。

・どの順番でどこから撮るか、みんなで共有して、無駄なく撮影を進められるように。

④撮影

・撮影で気をつけることは3つ。<明るさ・安定・音声>

撮影でよくある失敗は、
「余計なものが写り込んでいる」
「顔が暗くて見えない」
「声が聞こえない」の3つ。

撮影手順も注意する。
よくやるのが、監督が「ヨーイスタート!」と言ってから録画ボタンを押す、というミス。
これだと、演技の最初が撮れてない。
★録画ボタンを押したのを確認した後に、「ヨーイスタート!」が正しい。

置きっ放しカメラを避ける!!!
同ポジ=同じポジション、と呼ばれ、素人さんは間違いなくカメラが置きっぱなしになる。
全て同じ高さから撮られている、など。

ベランダから校庭を撮る、下の方から見上げて撮る、机の上に立って見下ろして撮る、などいろいろと工夫しよう。
これも詳しく解説できるけれど、そんな難しいことは考えず、あれこれ試してみよう。
これが映画の面白さ!

役者の演出は、感情ではなく行動で指示を出そう。

「悲しそうに!」ではなく、「手を握りしめて」など。

撮影にはタイムキーパー係が必要。
みんなダラダラしてしまうので、お尻を叩けるような、意見がしっかり言える人が向いている。

④編集

撮ったものを全て使わないといけないわけじゃない!!!!
※バッサバッサと捨てる勇気を持つ。
これが難しいのだけど。

・音が聞き取りやすいように編集する。
音量を上げたり、音楽が邪魔にならないようにしたり

・フリー音楽サイトの例:https://dova-s.jp/

・声は、残念ながら、間違いなく失敗している。
だから、バックアッププランも用意しておこう。
それはアフレコ。アフターレコーディング。
アニメのように、映像見ながら声を録音して、映像に当てはめること。

カメラを前にして、それぞれが自分の番になるとカメラに口を向けて話しかけるような位置で声を出す。

多少口の動きと合ってなくてもいい、と割り切る。
映像を無音で流しながら、何度も練習して、一気にやってしまう。
緊張感も出て、達成感もすごくなる。

 

困ったらご相談ください。親身になってアドバイスします!

 

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過去事例もご覧ください
ご参考までに、群馬県で2016年に開催した、
小学生向けワークショップの写真をご覧ください。
なんとなくイメージがわくかと思います。

小学生向け映画制作ワークショップ in 群馬県桐生市 – カルフ:ワークショップ写真集
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